昨日の疲れがまだ残っていますが、
青息吐息の状態で何とか、流注部分を仕上げました。
今日までの公開です。明日には昨日の肝経の生理の部分と一緒に、
非公開設定に戻してしまいますので、必要な方は今日中にコピー等、
お願いいたします。
では、いざ!
足厥陰肝経の脈(原文)
肝足厥陰之脈 起于大指叢毛之際 上循足跗上廉去内踝一寸 上顆八寸 交出太陰之後
上膕内廉 循股陰入毛中 過陰器抵小腹
挟胃属肝絡胆 上貫隔布脇肋 循喉嚨之後 上入頏顙 連目系 上出額 與督脈會于巓
其支者 従目系下頬裏環唇内 其支者 復従肝別貫膈上注肺(読み下し)
肝なる足厥陰の脈は大指の叢毛(ごうもう)の際(きわ)に起こる。上りて、足跗の上廉を循り、
内踝を去ること一寸、踝八寸上り、太陰の後方に交わり出で、膕の内廉に上り、
股陰を循り、毛中に入り、陰器を過ぎり、小腹に抵(いた)る。
胃を挟み、肝に属し、胆を絡い、上りて膈を貫き、胸肋に布(し)き、喉嚨(こうろう)の後を循り、
上りて頏顙(こうそう)に入り、目系に連なり、上りて、額に出て、督脈と巓に会す。
其の支なる者は目系に従いて頬裏を下り、唇内を環(めぐ)る。其の支なる者は復た肝に従いて別れ、
膈を貫いて肺に注ぐ。(意訳&経穴)
肝なる足厥陰の脈は大指の叢毛(ごうもう)の際(きわ)に起こる。 胆経からの経脈が親指の先から回り込んで爪甲を貫き、三毛に出て終わる。
足厥陰肝経の脈気は、この続き、母趾の三毛の際から始まる。
ですが、実際には肝経の流注は母趾の先端から始まり、この部分にお灸をすると、
肝経が良く暖まり実に良く効くそうです。
太敦(井木穴)…痙攣性の疾患に用います。てんかんなどに良く効きますが、
治療のし始めには、治療後、軽い発作が起こりがちなので、其の事を前もって
患者さんや付き添いの方に話しておくべきです。そうでないと、
「治療の所為で、発作が起こった」とか、「全然効果が無い」とか思われがちになるからです。
行間(熒火穴)…第一中足指節関節の母趾側にあります。肝虚証の治療点としては、
重要な穴になります。
太衝(兪土原穴)…下から刷り上げて両骨の間に取穴します。その他の併用穴としては、 行間穴と太衝穴は、 厥心痛に使用します。
厥心痛…古くの病名で、死血心痛、畜血心痛とも言う。瘀血、死血によって引き起こされる胃脘痛 をさす。
多くは打撲損傷、或いは熱い酒や熱い食物をしばしば飲食して胃口に死血が留滞し、
痛みを引き起こす。症状は胃痛が時に病んで時に止む、或いは湯水を飲んで咽に下れば
すぐにむせる、その痛みは上より下に、時にチチと言う音がしたり、
痒くてたまらなかったり、安らかに眠れなかったり、心下を削られる様であり、
上は胸膈に連なり、口中が血なまぐさく、脈は渋或いは芤などがみられる。
治療は、軽ければ開導し、重け れば攻下の法に良い。方は四物湯加大黄・桃仁・
紅花或いは桃仁承気湯などを用いる。胃虚は理中湯加肉桂・桃 仁・紅花などを用いる。
《証治ジュン補》「婦人の経行いまだ尽きず、たまたま恚怒に触され気が鬱して行ら
ず、血また績留し、上攻して心痛す。」とある。
太衝の脉は
鍼灸聚英に「病人の太衝脈の有無は死生を決する」と書いてある。身体全体の循環障害が出ているか どうかをここで診る。ここでお腹を暖める。お腹が暖まれば、手足も暖まる。治療後すぐに暖まると、後は冷え るだけなので、帰宅する頃に暖まる治療が丁度良い。
太敦、行間、太衝、この3穴だけは、神経支配が深腓骨神経であり、周りが浅腓骨神経に支配されている事と何か 関係があるはず。鼻緒のある草履を履くと、身体に良いといわれるが、その所以がここにありそう。

(原文)
上りて、足跗の上廉を循り、内踝を去ること一寸、踝八寸上り、太陰の後方に交わり出で、
膕の内廉に上り、股陰を循り、毛中に入り、陰器を過ぎり、小腹に抵(いた)る。(意訳)
上に上がって、足の甲の上を循ります。内踝とある、この踝は、脛骨の事です。経脈はこの脛骨の前面上を流れ ます。普通は、この脛骨前面は平らなのですが、肝虚の人はここに浮腫が出ていて、少し盛り上がっています。 故に、蠡溝の部分を押すと、ぺこんと凹みます。
※注意:蠡溝の部分の浮腫と、脾虚の浮腫みは違います。脾虚の浮腫みは、脛骨の内面に当たります。
ここを良く見分けて下さい。熟練者でも、間違う事があります。脈で見分ける事です。
膕の内廉に上った所が、曲泉です。膝を屈した時の横紋の頭に曲泉を取るのが便法ですが、
これが間違いの元に なります。下腿を伸展して、鵞足の部分に必ず取って下さい。
ここは、命がけの気持ち位で取る事が大事です。
中封(經金穴)…經金ですので相尅関係です。虚なら瀉法、実なら、補法です。
陽痿の妙穴で、焼き針で1mm 程 度、刺針することで治癒します。
蠡溝(絡穴)…内踝より上方5寸、脛骨上に縦溝があり、陥凹がある部分です。
年配者で、陰嚢が痒くて困る問ういう時の妙穴です。
中都(郄穴)…内踝より上方7寸、陥凹が在る所に取穴します。蠡溝に反応が無い時に、
ここを取穴します。アレルギーの人に良いといわれます。
副交感神経の興奮を下げる作用があるので、花粉症などに用いる事もあります。
膝関…脛骨内側顆から内踝まで1尺3寸を取穴の基準とします。この穴の一寸後に、
肝虚時に取穴する陰谷穴があります。
曲泉(合水穴)…縫工筋、薄筋、半腱様筋があつまる、鵞足の下に取ります。
ここは、肝虚時には非常に重要な穴です。命がけで取って下さい。
曲泉穴から内転筋群の中を上行して、膝関節内側の内転筋群の起始部に当たる
坐骨結節付近を循り、陰毛に入り、更に陰器を回り、支配しています。
特に男性の場合は、血流が海綿体に集まるという循環系の問題がありますので、
肝の変動が陰器に現れやすいのです。それで、陽痿(ED)の時には、肝経の治療が効くのです。
(原文)
胃を挟み、肝に属し、胆を絡い、上りて膈を貫き、胸肋に布(し)き、喉嚨(こうろう)の後を循り、上りて頏顙
(こうそう)に入り、目系に連なり、上りて、額に出て、督脈と巓に会す。(意訳)
腹中に入った経絡は、先ず胃を挟みます。昨日の原稿、肝の生理の部分で、赤字で赤線を引いた部分があった事
を思い出してください。肝は良く脾胃の消穀運動を助けるという一文です。この文で、肝が胃の消化運動を助けて
いる事が解かります。それで、肝気は胃を挟むという表現になるのです。脈気は肝に属し(がっちりと結びつく)、
胆を絡(まと)い(からみつき)、上行して横隔膜を貫き、肋骨一面を覆い、咽の後の部分をめぐって、額に出ます。
その部分で、目を生理的に栄養しています。更に上行して百会の部分で督脈と交会します。肝の脈気が肋骨を覆っ
ているので、肝の病症で胸脇苦満が出てくるのです。上行して百会まで行きますが、陰経で百会で交会するのは、
足厥陰肝経のみです。厥陰頭痛が頭頂部である事が、ここで解かります。
章門(脾募穴)…第11肋骨前端下際にある。脾の募穴、臓会穴と多彩である。
期門(肝募穴)…第9肋軟骨付着部下際にあります。数少ない自経の募穴です。
これらは、体表に現れる反応点となります。則ち、胸脇苦満を示す部分です。
(原文)
其の支なる者は目系に従いて頬裏を下り、唇内を環(めぐ)る。
其の支なる者は復た肝に従いて別れ、膈を貫いて肺に注ぐ。(意訳)
足厥陰肝経の支流は眼球から眼神経まで視力の関係を一巡し、その後、頬の裏側を
下って唇の内側を循ります。 循環器系に問題が起こると、チアノーゼを起こして
唇の色が紫色になりますね。唇を循るのは本来、脾経ですが、
この文章での唇は、「色」「循環系」を表します。その支脈がまた分かれて下降し、
今一度肝をめぐり、横隔膜を貫い
て次の流注である肺に注ぎます。こうして、肺に戻ってきた経脈は
輪のように途切れることなく、延々と続いてゆく事になります。